PDFメタ編集 :今風のPDFのメタ編集はこんな感じです。

閲覧ツールから編集ツールへ変わったPDFツール。そんな編集を「メタ編集」と呼ぼうと決めたわけですが、実際にどの辺がメタ編集なのか。最近その材料が揃ってきたので、ここでちょっと整理してみようかと思います。

まず、ワープロやエディタは書類を一から作り上げるアプリです。その点、メタ編集は「メタ」なので、書類を一から作るわけではありません。PDFはワープロやエディタで作成した書類から作成するので、メタ編集向きな書類といえます。この他、メタ編集できるといえばHTML(というかXMLなど)などがあるでしょうか。電子書籍EPUBもこの仲間ですね。

Wordそのもので書類を作成するときには、原稿の内容がより伝わりやすいように図版を挿入したり、印刷した場合に見開きになるようにページレイアウトを考えたりしますが、さらにスタイルを使って、文章と段落、セクションとドキュメントなどと、書類の構成を考えて原稿を整理したりもします。文章の構成を考えはじめたら、もはやそれは単なる書類の編集でなく、メタ編集といえるでしょう。メタ編集は、書類の内容を超えた、書類をどう見せるかということでもあるからです。

別に普通のワープロでもエディタでも編集すれば同じじゃないか、と思われるかもしれませんが、メタ編集で取り扱われるのはメタ情報であるところがポイントです。HTMLであればリンク情報やスタイルシートなどの情報ですが、リンク情報はAとBという情報を関連付けて、Cという新しいアイディアや関連情報を引き出したりします。これがメタ情報です。

電子書籍の場合、Wordで書いた原稿に見出しと本文などを指定し、 Romancer や でんでんコンバータ で本の形になるように書式を設定するのも「メタ編集」です。メタ編集してあると、EPUBなどに変換しやすくなりますが、それというのも、HTMLやEPUBのような書類は「構造化した書類」なので、すでにメタ編集が済んだ書類にほかならないのです。

 

「構造化した書類」というと何やら難しそうな気もします。ただ、わかりやすい文章というのは、1つ1つの文がわかりやすいだけでなく、前後の文章の起承転結のような関係でわかりやすくなったり、わかりにくくなったりもします。わかりやすい文章というのは、前後の文章の関係やテーマの論理に破綻がなく、結果的にそれなりの「構造化した書類」になっています。したがって、わかりやすい文章を書くことは、最終的には「構造化した書類」を作成することにつながっていたりします。パソコン版Wordにはアウトラインモードという文章の構造を視覚化した機能があるのも、作成中の文書をわかりやすく編集するための機能にほかなりません。

さて、そうはいってもWord以外のワープロを使っていたりすることもあります。アウトラインモードがあるワープロはまだ限られているので、ワープロで作成した書類を「構造化した書類」の視点で見直すには、いろいろと工夫をしなければなりません。もっとも簡単なのが、Wordと互換性のあるワープロを使って、Wordが使える環境ではWordに変換して読み込むことです(別に私はWordの宣伝をしているわけではありませんが…)。アウトラインモードが使えるかどうか、こう考えるとWordと互換性がある、というのはワープロを選ぶときの重要なポイントになるのですが、話がPDFから離れていってしまうので、それはまた別の機会に。

 

とりあえず、PDFの話に戻しますが、PDFといえば、やはり印刷物と関係が深いわけです。印刷できる書類であればPDFに変換することはできるといってよいでしょう。さらに書類がすでに印刷物になっている場合も、スキャナーで読み込んで新たにPDFファイルを作成することもできます。これらのPDFファイルはいわば印刷イメージですから、文章をアウトラインで整理したり、見出しや本文を整理して構造化するという話から一番遠いところにある感じもします。同じ電子書籍でくくられることの多いEPUBとPDFは、書類を作るワークフローから考えると対局にある書類といってもよいでしょう。

そこで、PDFはアウトラインで整理したり、そもそもメタ編集に向かないのかと、実は長年思っていたのですが、PDFと相性のよいiPhoneiPadでさまざまなPDF閲覧・編集ツールを使っているうちに、PDFにはPDFなりのメタ編集のワークフローがあることに気づきました。 当初のPDFは校正用でしたから、紙の代わりにPDFを使っているに過ぎませんでしたが、校正の枠を超えてPDFを紙の代わりに使っているうちに、PDFを参考したり引用したりすることもあります。場合によってはPDFに注釈をつける範囲にとどまらず、あるPDF元に新たに要約を作ったり書類を作ったりする機会も増えてきました。こんな時に閲覧はPDF、要約を作るのはワープロと2つのアプリを使うよりも、PDF編集アプリで白紙から書類を作成できると便利です。このときにPDFはもはや閲覧用ではなく、注釈やコメントも元の書類に対する付け足しではなくなります。

 

たとえば、こんな感じです。左が元となるコンテンツをスキャンしたPDF。右がこのテキストから作られるノートです。作業の内訳はこんな感じ。

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①まず上のコンテンツをスキャナーなどでPDF編集アプリに読み込んで注釈を入れる。

②次に下の白紙のテンプレートPDF にコンテンツのアウトラインを書いていく。

③この時に #GoodNotes のような PDF編集アプリ なら、元のコンテンツの注釈や図版がコピペできて便利。

④さらにアプリの中で画面分割できると尚良いが、今これができるのは #Notability だけか。

 

と、まあ、これが新しいPDFのメタ編集作業です。

実際のところ元のコンテンツを読み込んで重要な個所にラインマーカーで下線を引いて、それを白紙のノートの上に自分のアウトラインとして再構成して、必要な文字や画像をスクラップしているだけなのですが、こういった手書きや軽作業をデジタル化するツールは、これまで紙の上以外ではありそうでなかった。逆にいえば、PDF編集は紙の代わりに使えるということになります。

これまで手書きも使えて、こんなに打てば響くようなツールはちょっとなかったと思います。PDFの使い方は人それぞれですが、紙でなくデジタルですから、持ち運ぶときにかさ張らないし、コピーができて必要なら何枚でも印刷できる、というところが万人向けの利点です。

 

ということで、以下のiPad読本の下巻はPDF編でして、下巻が目指しているのはこんな感じのお話のまとめになります。
● 『iPadをパソコンみたいに使うときに読む本・上  キーボード・ファイル管理編

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